一角獣(ユニコーン)の記号性と両作の共鳴
村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年初版、文庫は1988年)と、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』(1980年、邦訳は1983年〜)を並べてみると、いくつかの興味深い符合が浮かび上がってくる。特に「一角獣(ユニコーン)」というモチーフの登場に注目すると、前者が後者の影響を少なからず受けた可能性も否定できない。■一角獣(ユニコーン)の記号性と両作の共鳴『薔薇の名前』下巻のp.102では、一角獣が「虚構」「写本」「禁書」などの文脈とともに語られる。エーコは中世修道院の迷宮のような図書館を舞台に、知識の制限や言葉の力、記号の暴走に絡む謎解きを描いた。ユニコーンはその中で「存在しないものをいかに人は信じ、語り、記録してきたか」という象徴のひとつである。一方、村上春樹の『世界の終り~...一角獣(ユニコーン)の記号性と両作の共鳴
2025/06/22 20:00