【書評】原田マハ「美しき愚かものたちのタブロー 」-国立西洋美術館が誇る松方コレクションの数奇な運命を辿る物語
これは上野にある国立西洋美術館のコレクションの基礎となっている松方コレクションとそれを集めた「こよなく絵画(タブロー)を愛した稀代のコレクター」松方幸次郎の物語だ。話の舞台になるのは2つの時代。1つは日本を代表する美術史家・田代雄一が第二次世界大戦後、フランス政府に接収され国内に留め置かれている松方のコレクションを取り戻すため、交渉人としてパリに赴いた1953年の話。もう1つは1921年から始まる回想の物語だ。 回想の物語で語られるのは若き田代が「自分は美術はわからん」という松方に招かれ、パリで画廊巡りをし、絵画や彫刻、家具などを買い集める手助けをする話だ。川崎造船所の初代社長であった経済人の…