カラオケの歌える老人ホーム【第1話】
【第1話】カラオケの歌える老人ホーム「なあ、ここってさ、本当にカラオケあんのか?」開口一番、そう言ったのがイナガキ・トシオ(74)。薄い白髪の長髪、革ジャン、サングラス、スキニーのジーンズ。介護士のミナミは、一瞬、「撮影か何かのロケハンですか?」と本気で訊いた。違う、入居希望だという。「どこもかしこも“静かにしましょう”ってばっかじゃん?でもここ、チラシに書いてあったぜ。“カラオケできます”って。…ホントに、できるのか?」ミナミが思わず笑うと、トシオは小さく鼻で笑った。「じゃあ、ちょっとだけ、試しに歌わせてくれよ。俺がまだ、生きてるってことを」その日、カラオケ室では入居者たちが『北国の春』を静かに合唱していた。そこへ突然、ギラついた男が現れて、マイクを握る。トシオが選んだのは、矢沢永吉の『時間よ止まれ』。...カラオケの歌える老人ホーム【第1話】
2025/03/25 00:16